このたびのことは、まったく思いもかけなかったことで、ほんとうに驚いております。これまでに選ばれた方々の、専門分野をつぶさに調べたわけではありませんが、子どもの文学や読書の問題を正面切って取り上げたのは初めてのことではないかと存じます。そのことを、まず何よりもうれしく思います。文学にしても、児童文学は“おんなこども”のものとして、一段ひくく見られてきたきらいがありましたから。
しかし、地球上に難問が集積し、その解決に人智を結集する必要が生じている現在、わたしたちが頼りにするのは、なんといっても未来のポテンシャルをもった子どもです。彼らがそのポテンシャルを最大限にのばし、果敢に難題に向かって、その解決にすすんでくれるように祈らずにはいられません。そのために、ひとりひとりの子どもが、しっかりしたことばの力を身につけ、これまでに集積された、人類の智恵がある文学作品から多くを吸収し、将来へ向けて生かすことが望まれます。そのために子どもが読書によって自力をつけることは、ますます大事になります。
これまで微力ながら、そのために力をつくすことができたことを感謝し、このたび、わたしが選ばれたことにより、多くのこころざしのある若い人たちが、子どもの読書活動の発展と普及に力をつくしてくださることを願っています。
2021年10月 松岡享子
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